leafly(リーフライ)

自作小説を投稿しています。

冷の彷徨 第一章「迷えし魂」 第1話{一人と3人}

{プロローグ}

高校生の春もすぎ、もう夏になろうとしていた、俺はその時に初めてソレに触れた。
 ソレは人の容姿をしていて、見た目は普通の少女だった、しかし彼女はとても冷たかった、まるで体温という概念が存在しないかのように。

彼女の名は{呼九尾 彩葉}(こくび いろは)彼女が人と違うのは体温だけではなかった、体重という概念すらも存在しないような軽さ、なにより彼女は俺以外の人に触れることができないのだ。
しかし彼女はおかしくない、体重も体温もなくて当然な存在だ。

     彼女、彩葉は人ではない…幽霊だ、
そしておかしいのはむしろ俺、{五光 未吉}(ごこう みよし)の方だ。
俺は幽霊が鮮明に見える、それだけでは{霊感の強い人}で終わっていただろう、しかし俺は幽霊に触れることができる
元死神の力を借りて……


 

 

 

 

 

祝日の朝、暖かい日差しが部屋を照らし、木々がそよ風で揺れている。
「爽やかな朝だな」
 俺はそう言って空を眺めていた。
「現実逃避しない」
 声のした方を向くと思いっきり睨まれていた。
「……すいません」
「よろしい」
そういって謎の数字と英語を喋りだしたのは 彩葉、幽霊だ。
「じゃあこの公式を使ってといてみて」
「さっきのは謎の暗号じゃ」

彩葉は呆れ顔で言った
「公式」
俺は今幽霊に勉強を教えられている……それにしても
「暖かい日差しだなぁ」
「……」ゴスッ
殴られた、ゴスッっていったぞ……

俺が痛がっていると元気な声が部屋に響き渡った。
「みよしーひまー」
 そういって部屋に入ってきたのはまた別の霊、大体中学生ぐらいの霊{細読 奈利}(こまどく なり)だ。
俺は即答した
「テレビでも見てろ」

奈利はほっぺを膨らませて
「面白いの無い」
奈利はとりあえず無邪気、その一言に尽きる、もう一度言ってもいいぐらいだ、奈利は無邪気だ。
「仕方ない遊んでやるか……」
そう言って立ち上がろうとした俺の腕を彩葉のとても冷たい手が掴む、振り返りながら一応笑顔で聞いてみる。
「なんでしょうか」
彩葉は怖い方の笑顔で声を低くして
「逃げよとしても無駄よ、あと8ページ、終わるまでやるわよ!」
「やあっ!」
最大限の力を込めて走ろうとした、しかし彩葉のちからも強く、結果的に肩が外れた。
俺はその場に座り込んで肩を抑えた
「痛い……」
「だいじょうぶ? みよし」

彩葉が心配そうな顔で覗いてきた、チャンス!
「正直やばいです。でも腕が動かないからこのまま寝る」
そう言った瞬間、心配顔だった彩葉の顔がさっきの怖い笑顔に戻った。
「志禾さーん、ちょっとお願いがあるんですけど」
「どうした」
しばらくしてだるそうに歩いてきたのはこれまた霊、約30代の{目外 志禾}(もくはずし しのぎ)だ。
「未吉の肩が外れたの、治せますか?」
「わかった」
志禾は無口でいつも本などを読んでいる、その為様々な知識があるようで……
志禾は俺を掴んで一気に力を込めた。
「ぎゃ!!」
俺の肩に激痛が走った。
「終了」
そういって志禾は戻っていった。

「より痛い」
まだ寝転がっている俺を奈利と彩葉が起こす。
「はじめるわよ」
「なんかやろう」
二人が別の意味の笑顔をこちらに向けてきた。